『 湖北はひとつ 』を合言葉に!   湖北地域農業センターは、広域調整機能を最大限に活用し、湖北地域における農業の振興及び担い手の育成を図り、将来展望の持てる農業構造の確立を目指すと共に、湖北地域の農業・農村の活性化を図ることを目的としています。   KohokuRegionalAgricultureCenter Tel:0749-62-4143 Fax:0749-62-4144 E-mail:kohoku-nougyou@tree.odn.ne.jp Web:https://kohoku.webnode.jp/ LINE:@549zxsvy                立夏(りっか)... 夏の始まりの時期です。日差しが強くなり気温が高くなる日もありますが、基本的には暑くもなく寒くもなく、湿度が低く風もさわやかで一年のうち、もっとも過ごしやすい季節です。 《 夏の立つがゆへなり 》

令和7年産 近江米生産基本方針

(公開日 令和7年1月21日)

近江米振興協会

1 令和6年産米の作柄・品質と情勢
【本県産米の作柄と品質の概況】
<品種共通>

・6月中旬~9月の高温の影響によって稲体の窒素代謝が増加したことや、地力窒素等の溶出が早まったことによる登熟後期の栄養凋落により登熱不良となり、白未熟粒が多く発生し玄米品質が低下するとともに収量が減少した。
・7月から8月にかけて、受粉障害の発生が多くなるとされる35℃を超える日が続いたことでほ場によっては不稔籾が増加し、収量減少の要因となったと考えられる。
・斑点米カメムシの吸汁害により玄米外観品質が低下した。また、一部地域ではイネカメムシの吸汁害による不稔籾が発生したことや、縞葉枯病やごま葉枯病等の病害が多発し、収量減少を助長した。
・農林水産省が公表した作況指数(12月10日現在)は、全国が「101」の「平年並」に対し、本県は「100」の「平年並」、水稲うるち玄米の1等米比率(10月31日現在)は、全国平均77.1%に対し、本県平均は59.6%となっている。
<早生品種>「みずかがみ」、「コシヒカリ」、「キヌヒカリ」
・「みずかがみ」では、7月下旬~8月上旬は高温となったが、品種特性である高温登熟性が発揮され、登熟が順調に進み、品質は平年並であった。
・「コシヒカリ」と「キヌヒカリ」では、倒伏はほとんど見られなかったが、8月下旬までの高温の影響により登熱後半に栄養凋落となったことで、平年に比べ減収した。
<中生品種>「日本晴」、「きらみずき」、「秋の詩」
・8~9月の高温の影響により登熱後半に栄養凋落となり、収量の減少・品質が低下。なお、高温登熟性に優れる 「きらみずき」の1等米比率は他品種と比べて高く、良好であった。

【需給および価格の動向】
・全国の主食用米の作付面積は、前年産(1,242万ha)から17,000ha増の125.9万ha、生産量は前年産(661万トン)から18.2万トン増の679.2万トンとなった。
・本県での主食用米の生産量は、昨年11月の滋賀県農業再生協議会臨時総会において設定された生産目標(生産の目安)146,100トンより4,400トン少なかったが、前年より5,600トン多い141,700トンとなった(面積では27,400ha)。
・令和6年産米は、前年より作付面積・生産量ともに増加し、作柄が「平年並」となったが、8月の米品薄以降の米価上昇により、県内外の中小卸売業者や米穀小売店等による直接買い付けや縁故米の増加などから、集荷業者に米が集まりにくい状況が続いている。
・小売店によっては新米の出回り後、仕入れはできるようになったものの、米価が上昇しているため、今後の消費量の動向を見極める必要がある。

2 令和7年産米の生産に向けた基本的な考え方
・10月に公表された国の「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針(以下「基本指針」という。)では、国民1人当たりの米消費量および人口の減少を考慮し、令和7/8年の需要量を663万トンと見通すとともに、今後も需要量が毎年10万トン程度減少することが見込まれる中、引き続き、各産地で需要に応じた生産・販売を行っていく必要がある。このことから令和7年産主食用米の適正生産量は令和6年産の生産量見通しと同水準の683万トンと設定された。
・ただし、この683万トンについては、10月30日の食料・農業・農村政策審議会食糧部会において、米価上昇による消費減退の懸念があるなど、需給の先行きに不透明感が強い状況であることから、年明けにも改めて需給見通しの見直しについて諮問されることとなった。
・滋賀県農業再生協議会では、令和7年産米の生産目標(生産の目安)について、「基本指針」をはじめ、本県産米の民間在庫量、需要実績の推移等を総合的に勘案し、148,000トンと設定されたところ。
・この数値を目安とし、事前契約(播種前契約、複数年契約等)に基づく需要に応じた米づくりなど産地の戦略的な取組を着実に進めることで、全国に占める近江米の需要量シェアの維持・向上を図る。
<具体的な取組>
☞ 集荷業者は卸売業者等が求める品種や用途等の情報を把握するとともに、生産者に対する情報提供や作付提案を行い、事前契約による実需者との結び付きを強化する。
☞ 生産者は、求められる米をしっかりと生産し供給するなど、契約に基づいた生産を基本とし、契約があるものを確実に出荷することで経営の安定化を図る。
☞ 関係機関・団体は、播種前契約に基づき既に播種されている麦や、市町農業再生協議会から示される生産目標との整合を図りながら、「求められている米」の作付けを「誰に」「どのように」推進するかを検討する。
・栽培においては、恒常化している気候変動、特に夏期の異常高温に適応するため、土づくりをはじめ基本的な技術対策を徹底するとともに、生育状況に応じた施肥や水管理、温暖化に伴い増加する病害虫防除などの迅速な情報提供により対策技術の実践を促し、収量向上と外観品質の安定を図る。
・農地の集積・集約化や農業機械の効率利用、土壌診断等に基づく適正施肥等により生産コストの低減を推進する。
・これらの対策を総合的に実施することにより、実需者から求められる「環境にやさしく」、「高品質」で、「安全・安心」、「おいしい」近江米の生産を推進するものとする。

3 主要品種の作付方向
・マーケットインの視点に立った米づくりの指針となる「近江米生産・流通ビジョン」との整合性を図りつつ、契約に基づく生産と安定供給を推進する。
・具体的な推進にあたっては、家庭用、業務用等の用途別需要情報を関係機関が収集・共有するとともに、生産者にその情報を確実に伝達したうえで作付提案を行い、集荷業者と生産者の間の播種前契約を中心とした事前契約を積極的に進めるなど、需要に応じた生産を行った上で、必要数量が集荷できるよう全ての関係者が連携して取り組む。
・「みずかがみ」や「コシヒカリ」等の良食味品種については食味の高位安定化を進め、食味ランキング(日本穀物検定協会)での「特A」取得をはじめ、「環境こだわり米」の比率を高めるとともに、その象徴となる「オーガニック米」等の特色ある米づくりやGAP等の取組による安全・安心な米づくりを進め需要の拡大を図る。
・令和6年産に本格デビューした「きらみずき」について、琵琶湖の保全に留まらず、温暖化防止や生物多様性の保全など、持続可能な農業のシンボルとして位置付ける。そのため、「オーガニック栽培」および「化学肥料(窒素成分)や殺虫・殺菌剤(化学合成農薬)を使用しない栽培」に限定し、「おいしさ」とともにこうした環境保全に対する一歩進んだ取組の価値を消費者が共感し支持・購入いただけるよう関係者等と共に推進を図る。
・近年、記録的な猛暑等の影響により主に業務用として流通する「キヌヒカリ」等では白未熟粒が発生するなど品質の低下が生じており、近江米の安定生産・品質向上に向け、気候変動下でも安定した栽培が可能となる品種への早期の転換を推進する。

4 技術対策
(1)収量の安定化と品質の向上(全品種共通)
・近年は、気候変動の影響により、平年に比べて「気温」、「日照時間」および「降水量」の乱高下が認められ、 また、大型台風等の気象災害が頻発するなど、近江米の収量と品質が不安定となっている。
・こうした気候変動に適応し、良質な近江米を生産するために、「猛暑に打ち克つイネづくり」(令和6年1月)等に基づき、高温対策を実践する。特に、緊急的に対応が必要な技術については栽培期間中でも臨機応変に対応できるよう促す。取組が不十分な技術については、生産者が着実に実践するよう関係者が誘導を図り、安定した収量の確保と1等米比率80%以上を目指す。
<必須基本技術>
☞ 土壌診断結果に基づき有機物や土づくり肥料を施用するとともに、深耕等により根張りを促進するなど、土づくりを実践し栄養凋落を防止する。
☞ 前作の稲わらは優良な有機物であるため秋期(年内)にすき込み、腐熟を促進させる。
☞ 産地や品種、目指す米づくりに応じた収量目標を設定し、過度の窒素施肥や有機物施用を控える。
☞ 健全な育苗に努める。
☞ 3~4本/株の植を基本とし、350~400本/㎡の穂数が確保できるよう、品種特性や土壌条件等に合った適切な栽植密度を選択する。
☞ 施肥田植機では肥料の種類ごとに目盛りを調整し、規定量を確実に施肥する。
☞ 活着後は浅水管理に努め、分げつを促進させる。
☞ 還元障害は、前年の作物残さや雑草の腐熟が進んでいない状態で入水・代かきを行うと発生しやすくなるので、作物残さのすき込みは発生後早めに行い腐熟を促進させる。例年、冬雑草の多いほ場では、早春の砕土による除草や、入水・代かきまでの期間を十分あけて砕土・すき込みを行い、分解を促すとともに、移植後は分げつ期の水管理に注意する。
☞ 適期・適切に中干しを行う。
☞ 出穂前後各3週間の常時湛水(水深3~5㎝に管理)を行い、品質低下の防止と収量向上を図る。
☞ 穂肥は、ほ場の地力、稲の生育(草丈、茎数、葉色)に応じて調整し、穂期の葉色が葉色板4.0以下を目標とする。また、全量基肥(一発肥料)栽培においても幼穂形成期以降の葉色が淡いほ場では、葉色を維持するため穂肥を施用する。
☞ 斑点米カメムシによる被害を防ぐために、出穂3週間前と出穂期の2回、畦畔の草刈りを行い、併せて適期に適切に薬剤防除を行う。
☞ 収量や品質に大きく影響する登熟期の水管理については、収穫作業に支障がない程度に落水を遅らせ、間断かんがいによる水分供給を徹底する。
<臨機応変な対応>
☞ 病害虫防除所から発表される発生予察情報に基づき、適期適切な病害虫防除を実践する。特に、「いもち病」、「斑点米カメムシ類」および「トビイロウンカ」は収量および品質に大きな影響を及ぼすため、情報には注意する。
☞ 農業技術振興センターから発信される「水稲生育診断情報」、気象災害等の発生が予想される場合に発信される「技術情報」等に基づき、臨機応変に対策を実践する。特に、「きめ細やかな水管理」と全量基肥栽培における「追肥の必要性」には注意する。

(2)「みずかがみ」の収量・食味の高位安定化
・「特A」産地に相応しい良食味米生産に努め、消費者等の期待に応えることが重要である。
・このため、令和5年2月に近江米振興協会が発行した「みずかがみ栽培マニュアル」に基づく技術対策を徹底する。

(3)新品種「きらみずき」の生産安定
・生産(農業者)から販売(消費者)までの繋がりを強く意識し、コンセプトである"こだわる人が選ぶ「おいしさ」と「やさしさ」"による好循環が生まれるよう、生産・流通・販売の各段階が連携して一体的に取り組む。
・生産場面においては、高温登熟性に優れるという特性があるものの、近年の異常高温等の影響が最小限となるよう、土づくりを基本とした施肥改善等を徹底し、安定的で高品質な生産を進める。

5 「安全・安心」な滋賀の特色ある米づくり
・「環境こだわり米」の生産拡大を図ることとし、区分荷受け・区分管理により、「環境こだわり米」としてのロットを確保するなど、安定した流通に取り組む。
・「みずかがみ」については、全て「環境こだわり栽培」であることから、「環境こだわり米こしひかり」と「みずかがみ」について専用パッケージを用いて販売するなど安全・安心な近江米の代表的取組として継続する。
・さらに、水稲では環境保全型農業直接支払交付金の取組面積が全国一であること、生産者が国民的資産である琵琶湖の環境保全のために努力していることを「おいしさ」とともに県内外に発信するとともに、環境こだわり農業の象徴的な取組として「オーガニック近江米」や「きらみずき」を推進する。
・食品としての安全性の確保に加え、環境保全、労働安全等を目的としたGAPの取組とその高度化に向けての実践を推進する。
・カドミウムの吸収を抑制するため、土づくり肥料の施用および出穂前後3週間の常時湛水を徹底する。

6 コスト低減を図るための技術対策等
・集落営農による水稲経営の一元化、担い手への農地の集積・集約化、作期分散に配慮した品種の作付けを進め、施設・機械の効率利用を図り、コスト低減を推進する。
・近年、省力化やコスト削減につながるとして期待の大きい、水田の水管理遠隔操作技術、自動操舵機能付きトラクタ・田植機およびドローンを用いたリモートセンシング等のICT等の先端技術を活用したスマート農業を推進する。
・直播栽培など低コスト・省力技術の普及拡大を図る。
・土壌診断や生育診断等に基づく土づくりや効率的な施肥を進め、資材コストの低減を推進する。

7 環境保全対策の推進
・琵琶湖および周辺環境への負荷を軽減して農業の持続的発展を進めていくために、地力増進作物の作付けや自動操舵機能付き田植機の活用、農業濁水の流出防止、農業系廃プラスチックの排出抑制に取り組む。
・特に緩効性肥料の被膜殻が意図しない形で河川等へ流出することを防ぐため、水管理は適正に行う。

8 普及推進体制
・これらの対策等の着実な実践を図るため、次の取組により、関係者の情報共有、農業者への周知を図る。
☞ 需要に応じた米づくりを進めるため、品種別、用途別の生産状況や流通・販売動向について、あらゆる機会を通して生産者に対し確実に伝達する。
☞ 安定した作柄や品質の高位安定化を図るため、生育情報の発信、啓発資材の配布、農談会の開催等を通してタイムリーな情報伝達を徹底する他、現地研修会の開催や部会組織等での研鑽活動を通して技術の実践に結び付ける。


別記

 収量、外観品質および食味向上のための重点技術対策

① 土づくり
□ 秋耕による稲わらのすき込み
□ 有機物や土づくり肥料の投入(土壌診断の実施)
□ 深耕(作土深15㎝以上を目標)

② 植え付け(「みずかがみ」は極端な疎植をしない)
□ 適期植え  □ 細植え  □ 適正栽植密度

品種 適期植え 細植え 適正栽植密度(坪あたり株数)
5月上旬 5月中旬 5月下旬 湖辺粘質 湖辺砂質平坦 中山間
みずかがみ × 3~4本/株 60 60~70 70
コシヒカリ × 50~60 60 60~70
キヌヒカリ
中生・晩生

栽植密度
(/坪)
50株 60株 70株
必要苗箱数
(/反)
14~15 16~17 18~20
※播種量150g/箱、植え付け本数3~4本/株

③施肥
□ 地帯別の適正かつ確実な基肥、追肥施用
・高温時における登熟期の栄養不足を回避するため、適期に必要量を確実に施用する。
・「コシヒカリ」「秋の詩」は倒伏を回避しつつ登熟後半まで栄養状態を維持するため、分施体系または緩効性肥料の利用とする(幼穂形成期までの生育量が過剰の場合は、分施体系の2回目を重点施用とする)。
□ 生育に応じた穂肥施用
 (幼穂を確認し葉色、株張りに応じて穂肥を適用する)
□ 大豆跡の適正施肥
・「みずかがみ」の場合、基本は基準の半量が上限であるが、地力が低い場合や、大豆の収撃が思わしくなかった場合は、施肥量を増量するなど調節する。一例として、大豆の収量が180㎏/10a以下の場合は、基準量の7割程度を施用する。
□ 全量基肥一発の必要量投入
田植前に、施肥量を調整するダイヤルの調整を行い、落下量を確認し、確実に施肥する。
□ 気候変動に対応した施肥の実践
・全量基肥一発肥料を用いた栽培においても、気象の推移によっては追肥が必要になる場合があることを認識し、生育情報を参考に気候変動に応じた施肥を実践する。

④水管理・防除・収穫
□ 活着後の浅水管理
□ 早めの溝切りと中干し
・茎数が目標穂数の8割になったら速やかに中干しを行う。
・中干しの実施により太く強い茎を作るとともに、収穫前まで入水できる田面の硬さを確保する。
□ 出穂前後各3週間は常時湛水(水を切らないように、水深3~5㎝で管理)
□ 収穫5日前まで間断かんがい(胴割粒の防止、粒大の確保)
□ 発生予観察に基づく防除(いもち病、紋枯病の本田防除)
・過去に発生が見られなくても、温化に伴い増加する病害虫(トビイロウンカ等)に注意する。
□ 畦畔2回連続草刈り
 (斑点米カメムシ防除 出穂3週間前と出穂期の2回連続)
□ 品種別に適期に防除(斑点米カメムシ防除)
・「みずかがみ」や中生品種で被害が多いところは注意
□ 適期収穫(籾黄化率:85% が目安で品種特性に注意、刈り遅れない)
□ 適正な乾燥(高水分籾を急激に乾燥しない)

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