労災保険 特別加入制度について
農業者の方も労災保険に加入できます!
労災保険は、本来、労働者の業務または通勤による負傷、疾病、障害、死亡に対して保険給付を行う制度ですが、労働者以外でも、その業務の実情、災害の発生状況などからみて、特に労働者に準じて保護することが適当であると認められる一定の人については特別に任意加入を認めています。これが、特別加入制度です。
農業者の場合には、次の(1)(2)(3)の区分のいずれかに特別加入することができます。
特別加入をすることのできる範囲
(1)特定農作業従事者
特定農作業従事者とは、次の①~③の全てに該当する人をいいます。
① 「年間の農業生産物(畜産及び養蚕に係るものを含む)の総販売額が300万円以上」または「経営耕地面積が2ヘクタール以上」の規模(この基準を満たす地域営農集団などを含む)を有している。
② 土地の耕作・開墾、植物の栽培・採取、家畜(家きん及びみつばちを含む)・蚕の飼育の作業のいずれかを行う農業者(労働者以外の家族従事者などを含む)である。
③ 次のアからオまでのいずれかの作業に従事する。
ア 動力により駆動する機械(トラクター等)を使用する作業
イ 高さが2メートル以上の箇所(果樹園等)での作業
ウ サイロ、むろなどの酸素欠乏危険場所での作業
エ 農薬の散布作業
オ 牛、馬、豚に接触し、または接触するおそれのある作業
(2)指定農業機械作業従事者
指定農業機械作業従事者とは、農業者(労働者以外の家族従事者などを含む)であって、次の機械を使用し、土地の耕作、開墾または植物の栽培、採取の作業を行う人をいいます。
① 動力耕うん機その他の農業用トラクター
② 動力溝掘機
③ 自走式田植機
④ 自走式スピードスプレーヤーその他の自走式防除用機械
⑤ 自走式動力刈取機、コンバインその他の自走式収穫用機械
⑥ トラックその他の自走式運搬用機械
⑦ 次の定置式機械または携帯式機械
・動力揚水機 ・動力草刈機 ・動力カッター ・動力摘採機 ・動力脱穀機
・動力剪定機 ・動力剪枝機 ・チェーンソー ・単軌条式運搬機 ・コンベヤー
⑧ 無人航空機(農薬、肥料、種子、もしくは融雪剤の散布または調査に用いるものに限る。)
(3)中小事業主等
中小事業主等とは、農業の場合には常時300人以下の労働者を使用する事業主(事業主が法人の場合にはその代表者)および労働者以外でその事業に従事する人(特別加入ができる事業主の家族従事者など)をいいます。
なお、労働者を通年雇用しない場合であっても、1年間に100日以上、労働者を使用することが見込まれる場合を含みます。
「特定農作業従事者」、「指定農業機械作業従事者」、「中小事業主等」は重複し て加入することはできませんので、どれか1つを選択して加入してください。
特別加入手続き
(1)特定農作業従事者または指定農業機械作業従事者として加入する場合の手続き
特別加入団体として承認されている団体(JA、県中央会等)に申し込んでください。加入手続きはその団体が行います。
※お近くのJA・県中央会が特別加入団体になっていない場合もありますので、まずは都道府県労働局または労働基準監督署にご確認ください。
加入手続きは、加入者の氏名、作業の具体的な内容、業務歴および希望する給付基礎日額などを記入した届出書を特別加入団体が所轄の労働基準監督署長(以下「監督署長」といいます。)を経由して都道府県労働局長(以下「労働局長」といいます。)に提出する必要があります。
すでに特別加入している方で氏名や作業内容などに変更が生じた場合には、変更届を、特別加入団体から、監督署長を経由して労働局長に提出する必要があります。
(2)中小事業主等として加入する場合の手続き
農業者の方が中小事業主等として特別加入するためには、
① 雇用する労働者について労働保険関係が成立していること
② 労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること
の2つの要件を満たすことが必要です。
提出するもの : 特別加入申請書(中小事業主等)
提 出 先 : 監督署長を経由して労働局長
<加入の範囲>
原則:事業主本人のほか家族従事者など、労働者以外で業務に従事している人全員を包括して特別加入の申請を行う必要があります。
例外:病気療養中、高齢その他の事情により実態として事業に従事していない事業主は包括加入の対象から除くことができます。
申請手続を行う際は、加入者の氏名、業務の具体的な内容、業務歴および希望する給付基礎日額などを「特別加入申請書」に記入し、労働保険事務組合を通じて監督署長を経由して労働局長の承認を得ることが必要になります。
すでに特別加入を承認されている方で氏名や業務内容などに変更が生じた場合には、労働保険事務組合から「特別加入に関する変更届」を監督署長を経由して労働局長に提出する必要があります。
加入日・変更日は、所轄の労働基準監督署に書類を提出した翌日以降30日以内の、希望する日となります。
補償の対象となる範囲
(1)業務災害
業務災害については、以下の項目に該当する場合に保険給付が行われます。
① 特定農作業従事者
農業者が、農作業場で行う耕作などの作業(「土地の耕作や開墾」、「植物の栽培や採取」、「家畜(家きんやみつばちを含む)や蚕の飼育の作業」)のうち、次のア~オのいずれかに当たる作業を行う場合(その作業に直接附帯する行為を含む)
ア 農作業場で動力により駆動する機械を使用して行う作業
イ 農作業場の高さが2メートル以上の箇所において行う作業
ウ 農作業場で牛・馬・豚に接触し、または接触するおそれのある作業
エ 農作業場の酸素欠乏危険場所で行う作業
オ 農作業場で農薬を散布する作業
(ご注意)養鶏や養蜂などでア~オの作業を伴わない場合は、負傷等(みつばちに刺される等)が生じても保険給付は行われません。
② 指定農業機械作業従事者
ア 農業者が、ほ場または、ほ道の作業場において指定農業機械を使用して行う作業およびこれに直接附帯する行為を行う場合
イ 農業者が指定農業機械をほ場などの作業場と格納場所との間において、運転または運搬する作業(苗、防除用薬、堆肥などを共同育苗施設などからほ場などの作業場へ運搬する作業を含む)およびこれに直接附帯する行為を行う場合
③ 中小事業主等
ア 特別加入申請書の「業務の内容」欄に記載された労働者の所定労働時間(休憩時間を含む)内に特別加入した事業のためにする行為、およびこれに直接附帯する行為を行う場合(事業主の立場で行われる業務を除く)
イ 労働者の時間外労働または休日労働に応じて就業する場合
ウ アまたはイに前後して行われる業務(準備・後始末行為を含む)を中小事業主等のみで行う場合
エ ア、イ、ウの就業時間内における事業場施設の利用中および事業場施設内で行動中の場合
オ 事業の運営に直接必要な業務(事業主の立場で行われる業務を除く)のために出張する場合
カ 通勤途上で次に掲げる場合
(ア)労働者の通勤用に、事業主の提供する交通機関の利用中
(イ)突発事故(台風、火災など)による予定外の緊急の出勤途上
キ 事業の運営に直接必要な運動競技会その他の行事について労働者(業務遂行性が認められる者)を伴って出席する場合
(2)複数業務要因災害 New!
事業主が同一でない二以上の事業における業務を要因とする傷病等が発生した場合であって、要件を満たしていれば、労働者と同様に保険給付が行われます。
※詳細については、厚生労働省のホームページに掲載しています。
「複数事業労働者への労災保険給付 わかりやすい解説」
(3)通勤災害
① 特定農作業従事者または指定農業機械作業従事者の場合
通勤災害は補償の対象となっていません。ただし、農作業のため農業用トラクター・コンバインなどに乗って車庫からほ場へ向かう途中で負傷した場合は業務災害として補償対象になります。
② 中小事業主等の場合
一般の労働者と同様に補償されます。
具体的には、就業に関し、合理的な経路および方法で①~③の移動中に災害が起きた場合に補償対象となります。
① 住居とほ場など作業場との間の往復
② 就業の場所から他の就業の場所への移動
③ 赴任先住居と帰省先住居との間の移動
なお、合理的な経路を逸脱・中断した後に災害が起きた場合には、通勤災害と認められません。例外として、その逸脱・中断が日用品の購入など日常生活上必要な行為をやむを得ない事由により最小限度で行う場合は、合理的な経路に戻った後の移動は通勤と認められます。
農業従事者への労災保険の適用について
農業の場合、労働者に係わる労災保険の強制加入と任意加入の区分は以下のとおりです。
法人の事業・・・労働者:常時5人以上【強制加入】 / 労働者:常時5人未満【強制加入】
個人の事業・・・労働者:常時5人以上【強制加入】 / 労働者:常時5人未満【原則として任意加入※】
※任意加入の事業場でも労働者の過半数が希望する場合や事業主が特別加入する場合は強制加入となります。
加入時健康診断について
特別加入の前に、特定業務に一定期間従事し、特別加入後もその業務を行う場合は、健康診断が必要となります。
たとえば、振動工具(草刈機等)を使用する業務に通算1年以上従事し、特別加入後も同じように振動工具を使用する業務に従事する場合が該当します。
この健康診断結果により、
① 症状や障害の程度が一般的に療養に専念しなければならないと認められる場合 → 特別加入することはできません。
② 症状や障害の程度が特定業務からの転換が必要と認められる場合 → 特定業務を除く業務に限り特別加入できます。
軽トラック点検・整備中の災害について
農作業場で行う耕作等の作業のため、自宅から作業場までの間軽トラックを使って農産物や農業に使う資材などを運ぶ行為は、動力により駆動される機械を使用して行う土地の耕作などの作業に直接附帯する行為に当たります。また、上記作業に伴う軽トラックの点検・修理についても、農業者によって日常行う程度のものであれば、土地の耕作などの作業に直接附帯する行為に当たりますので、業務災害として労災保険による給付を受けることができます。
集荷作業中や、出荷・販売作業中の災害について
農産物を共同集荷施設までトラックなどで運ぶ作業の場合は、集荷作業となり、植物の栽培等に直接附帯する行為に当たることから、業務災害として労災保険による給付を受けることができます。
また、平成30年4月1日以降に発生した災害については、箱詰めされるなどすでに商品化された農産物を出荷施設まで運ぶ「出荷作業」や、出荷作業後に行われる「販売作業」についても、集荷作業同様、植物の栽培等に直接附帯する行為に当たるものとして扱い、それらの作業中の災害については、業務災害として労災保険による給付を受けることができるようになりました。
例えば、出荷のために直売所へ向かい、出荷を行った者がそのままその直売所で販売を行い、農作業場へ戻るという一連の行為は直接附帯する行為に該当します。なお、この取扱いは指定農業機械作業従事者が指定農業機械を用いて当該行為を行う場合についても同様となります。
ライスセンターでの作業中の事故について
米は刈り取ったもみのままでは通常出荷せず、乾燥などの作業が必要です。この場合の乾燥は天日によるものだけではなく、機械による場合でも同様に考えられ、収穫した米をライスセンターで乾燥させる作業は植物の栽培等の作業に含まれることになります。したがって、ライスセンターは農作業場に当たりますので、動力により駆動される機械を使用して作業中に被災した場合には、業務災害として労災保険による給付を受けることができます。
特定農作業従事者・指定農業機械作業従事者の通勤災害について
特定農作業従事者や指定農業機械作業従事者については、通勤災害の適用はありませんが、自宅とほ場との間をトラックなどの運搬機械を用いて往復している場合には、業務災害として保護されます。
特定農作業従事者については、農産物や農作業のための資材などを運ぶために自宅の車庫からほ場まで軽トラックを運転する行為は、耕作などの作業に直接附帯する行為に当たるため、通勤災害ではなく、業務災害として労災保険による給付を受けることができます。また、指定農業機械作業従事者についても、軽トラックに乗って自宅の車庫からほ場まで向かう途中に被災した場合には、業務災害として労災保険による給付を受けることができます。
集落営農集団について
個々の農家の規模が小さくても、所属している集落営農集団において、農業生産物総販売額が300万円以上または経営耕地面積2ヘクタール以上であれば、各構成農家も規模の要件を満たすものとして特別加入することができます。
必見!農業者の皆さん 労災保険の特別加入をご存じですか!! パンフレット
※上記パンフレットが必要な方は、当地域農業センター(0749-62-4143)までお申し出ください。
労災保険の特別加入制度(特定農作業従事者または指定農業機械作業従事者として加入する場合)についての内容やご相談・ご加入については、特別加入団体として承認されている「JA滋賀中央会(JA滋賀担い手サポートセンター)」または最寄りの「JA」にお問い合わせください。加入手続きはその団体が行います。
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