青色申告について
確定申告
農業を営み、農作物を販売することによって収入があれば、確定申告をする必要があります。
我が国の所得税は、納税者の方が自ら税法に従って所得金額と税額を正しく計算して申告し、納税をするという申告納税制度を採っています。
1年間(1月1日から12月31日までの間)に生じた所得金額を正しく計算し、申告(翌年の2月16日から3月15日の間)するためには、収入金額や必要経費に関する日々の取引の状況を帳簿に記録(記帳)し、また、取引に伴って作成したり受け取ったりした書類を保存しておく必要があります。
事業(農業)所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき業務を行う全ての方は、帳簿を備え付け、これらの業務に係る取引を所定の方法により記録し、一定期間保存することが所得税法で義務付けられています。
帳簿等の記帳は、単に税金の計算を行うためだけでなく農業経営の合理化・効率化等の検討にも役立つものです。
帳簿書類の保存期間
保 存 が 必 要 な も の | 保存期間 | |||
白 色 申 告 | 帳簿 | 収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿) | 7年 | |
業務に関して作成した上記以外の帳簿(任意帳簿) | 5年 | |||
書類 | 決算に関して作成した棚卸表その他の書類 | 5年 | ||
業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類 | ||||
青 色 申 告 | 帳簿 | 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など | 7年 | |
書類 | 決算関係書類 | 損益計算書、貸借対照表、棚卸表など | 7年 | |
現金預金取引 等関係書類 | 領収証、小切手控、預金通帳、借用証など | 7年 ※1 | ||
その他の書類 | 取引に関して作成し、又は受領した上記以外の書類 (請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など) | 5年 |
※1 前々年分所得が300万円以下の方は、保存期間5年です。
※ 保存期間は、帳簿についてはその年の翌年3月15日の翌日から7年間(又は、5年間)、書類についてはその作成又は受領の日の属する年の翌年3月15日の翌日から7年間(又は、5年間)となります。
青色申告と白色申告の違い
確定申告をする方法としては、青色申告と白色申告があります。青色申告をするほうが白色申告に比べて、さまざまなメリットがあります。青色申告をすれば、白色申告に比べて最大65万円の控除を受けることができます。
申告の際には損益計算書や貸借対照表を提出する必要があり、簿記の知識が必要となってきます。これらが分からなければ、10万円の青色申告特別控除を選ぶことができます。
青色申告の10万円の控除であれば、白色申告と同様の簡易簿記で行うことができます。青色申告にするだけで、10万円の控除ができます。以前は白色申告の場合、記帳が必要ありませんでしたが、平成26年度から白色申告でも記帳が必要になっているので、青色申告でも白色申告でもあまり変わりません。
《白色申告の記帳する内容》 売上げなどの収入金額、仕入れや経費に関する事項について、取引年月日、売上先・仕入先やその他の相手方の名称、金額、日々の売り上げ・仕入れ・経費の金額等を帳簿に記載します。
青色申告 | 白色申告 | |
利 点 | 最高65万円の特別控除 赤字損失分を繰越できる 専従者への給与が必要経費になる 減価償却の特例が受けられる 特別にその年だけ収入が増えた場合「平均課税制度」を利用できる | 専従者の給与の一部が必要経費になる。(配偶者は86万円、その他の専従者は50万円が最高限度額) |
作 成 書 類 | 損益計算書 貸借対照表 | 収支内訳書 |
記 帳 義 務 | 正規の簿記による帳簿の記帳 | 平成26年1月から記帳が必要 |
申 請 手 続 | 「青色申告承認申請書」家族に専従者給与を払う場合は、「青色事業専従者給与に関する届け出書」 | 特になし |
65万円の青色申告特別控除を受けるためには、正規の簿記の原則に沿った記帳をしなければいけません。
さらに、記帳に基づいて作成した貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付して提出しなければいけません。
正規の簿記による帳簿の記帳ができなければ、10万円控除の簡単な簡易簿記を選択することが出来ます。
青色申告特別控除の改正点【令和2年分より】
令和2年年分確定申告から、青色申告特別控除の改正が適用されます。
従来の要件(複式簿記による記帳を行い、貸借対照表と損益計算書を添付した確定申告書を期限内に提出すること)を満たすだけでは、55万円の控除しか受けられません。
65万円の控除を受けるには、従来の要件をクリアした上で「e-Taxを利用して確定申告及び決算書のデータを送信する」か「電子帳簿保存を利用する」のどちらかを行う必要があります。
農業の一般的な必要経費
農産物を収入にするためにかかる費用は、すべて必要経費にすることが出来ます。ただし、農業用以外にも使用するものは農業用に係る部分のみが必要経費となります。これらの費用を決算書に記入していきます。
項目 | 具 体 例 |
雇人費 | 常雇・臨時雇人などの労賃及び賄費 |
小作料・賃借料 | ①農地の賃借料、②農地以外の土地、建物の賃借料、賃耕料、農機具の賃借料、農業協同組合などの共同施設利用料 |
減価償却費 | 建物、農機具、車両、搾乳牛などの償却費 ※ 取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産については、減価償却をしないでその使用した年以後3年間の各年分において、その減価償却資産の全部又は特定の一部を一括し、一括した減価償却資産の取得価額の合計額の3分の1の金額を必要経費にすることができます。 |
貸倒金 | 売掛金などの貸倒損失 |
利子割引料 | 事業用資金の借入金の利子や受取手形の割引料など |
租税公課 | ①税込経理方式による消費税及び地方消費税の納付税額、事業税、固定資産税(土地、建物、償却資産)、自動車税(取得税、重量税を含む。)、不動産取得税などの税金 ②水利費、農業協同組合費などの公課 ※ 所得税及び復興特別所得税、相続税、住民税、国民健康保険税、国民年金の保険料、国税の延滞税・加算税、地方税の延滞金・加算金、罰金、科料、過料、交通反則金などは必要経費になりません。 |
種苗費 | 種もみ、苗類、種いもなどの購入費用(自給分については、収穫した時の価額によって記載します。) |
素畜費 | 子牛、子豚、ひななどの取得費及び種付料 |
肥料費 | 肥料の購入費用 |
飼料費 | 飼料の購入費用 |
農具費 | 使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の農具の購入費用 ※ 取得価額が10万円未満であるかどうかは、税込経理方式又は税抜経理方式に応じ、その適用している方式により算定した金額によります。 |
農薬衛生費 | 農薬の購入費用や共同防除費 |
諸材料費 | ビニール、むしろ、なわ、釘、針金などの諸材料の購入費用 |
修繕費 | 農機具、農用自動車、建物及び施設などの修理に要した費用 |
動力光熱費 | 電気料、水道料、ガス代、灯油やガソリンなどの燃料費 |
作業用衣料費 | 作業衣、地下たびなどの購入費用 |
農業共済掛金 | 水稲、果樹、家畜などに係る共済掛金 |
荷造運賃手数料 | 出荷の際の包装費用、運賃や出荷(荷受)機関に支払う手数料 |
土地改良費 | 土地改良事業の費用や客土費用 |
委託費用 | 農機具等を使用して行う農作業などの委託費用 |
固定資産等の損失 | 事業用固定資産等の取壊しや災害による滅失などの場合の損失 |
雑費 | 農業経営上の費用で他の経費に当てはらまらない経費 |
※領収書等を保管・整理する際には、これらの項目を参考にしてみてください。
控除の種類
農業所得は、売上から経費を引いたものです。その他に、農業所得から各種の控除を引くことができます。所得控除には以下のようなものがあります。
・雑損控除 ・医療費控除 ・社会保険料控除 ・小規模共済等掛金控除 ・生命保険料控除 ・地震保険料控除 ・寄附金控除 ・障害者控除 ・寡婦控除 ・寡夫控除 ・勤労学生控除 ・配偶者控除 ・配偶者特別控除 ・扶養控除 ・基礎控除
農業販売金額から各種の経費を引き、さらに専従者の給与を引いた額が所得金額になります。その所得金額から各種控除された金額が、課税される金額になります。
医療費控除の添付資料が領収書から明細書へ変更になります
改正内容
・医療費控除及びセルフメディケーション税制の適用を受ける際に添付する書類が、医療費又は医薬品費の領収書に代えて医療費控除の明細書又は医療保険者が発行する医療費通知となります。
・医療費控除の明細書を添付する場合、記入内容の確認のため確定申告期限等から5年間、税務署から領収書の提示又は提出を求める場合がありますので、領収書はご自宅等で保管する必要があります。
・医療保険者が発行する医療費通知を確定申告書に添付する場合、領収書の保管も不要です。
e-Taxにより確定申告書を提出する場合には、領収書の添付・送付は従来から必要ありませんが、保管する必要があります。
摘要時期
・平成29年分以後の確定申告書を平成30年1月1日以後に提出する場合に適用されます。
・経過措置として、平成29年分~平成31年分については、明細書等は提出せず領収書の添付又は提示でも可能です。
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例、H29年新設)
※令和4年1月以降、制度が5年延長され、税制対象医薬品の範囲が拡充されました。
適切な健康管理の下で医療用医薬品からの代替を進める観点から、健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組(※1)を行う個人が、平成29年1月1日から令和3年12月31日までの間に、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る一定のスイッチOTC医薬品(※2)の購入の対価を支払った場合において、その年中に支払ったその対価の額の合計額が1万2千円を超えるときは、その超える部分の金額(その金額が8万8千円を超える場合には、8万8千円)について、その年分の総所得金額等から控除する。
※1 特定健康診査、予防接種、定期健康診断、健康診査、がん検診
※2 要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品(類似の医療用医薬品が医療保険給付の対象外のものを除く。)対象となるOTC医薬品のパッケージやレシートにはマークが表示されることになり、対象となるOTC医薬品かどうかをご確認できます。【スイッチOTC医薬品有効成分リスト(令和3年12月27日時点)】
セルフメディケーション税制の適用を受ける場合には、現行の医療費控除の適用を受けることができません。
医療費控除の明細書
明細書には、確定申告書に記載した医療費控除の適用を受ける金額の計算の基礎となる医療費について、下記の事項を記載する必要があります。
従来の医療費控除の適用を受ける場合
① その年中において支払った医療費の額
② 医療費に係る診療、治療等を受けた者の氏名
③ 医療費に係る診療、治療等を行った病院、診療所その他の者の名称又は氏名
④ その他参考となるべき事項
また、上記①~④が記載された書類のほか、各医療保険者の医療費の額を通知する一定の書類で、控除適用医療費の額等の記載がある書類も認められます。
セルフメディケーション税制の適用を受ける場合
① その年中において支払った特定一般用医薬品等購入費の額
② 特定一般用医薬品等購入費に係る特定一般用医薬品等の販売を行った者の氏名 または名称
③ 特定一般用医薬品等購入費に係る特定一般用医薬品等の名称
④ その他参考となるべき事項
但し、医療費の領収書は5年間の保存義務があり、税務署から求められた場合には提示または提出しなければなりません。
青色申告の承認申請について
青色申告の承認を受けようとする方は、申告をしようとする年の3月15日までに所得税の青色申告承認申請書を作成のうえ、持参又は送付により納税地を所轄する税務署長に提出してください。
青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする場合
算入しようとする年の3月15日までに、青色事業専従者給与に関する届出書を作成のうえ、持参又は送付により納税地を所轄する税務署長に提出してください。
※届出書に記載した内容とは別に給与規程を定めているときは、その写しを1部提出してください。
青色申告特別控除を受けるには、仕訳帳・総勘定元帳・損益計算書・貸借対照表などの書類・帳簿が必要です。
パソコン用農業簿記ソフトは、伝票(日付・摘要・金額・相手勘定科目)を入力するだけで、元帳への転記から試算表・決算書・青色申告まで自動でできる利便性があります。簿記は税務申告のためだけでなく、記帳の結果から得られる貸借対照表や損益計算書などの財務諸表により経営を分析・把握して、問題点や発展のカギを見つける基礎情報になります。
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