青 色 申 告 制 度
農業を営む方にとって、日々の記帳は、確定申告のためだけではなく、農業経営の状況を把握し、経営改善につなげるためにも大切なものです。
ここでは、農業者の皆様を対象に、青色申告制度、帳簿・書類の保存、農業所得の必要経費、青色申告特別控除、農業簿記などについてご紹介します。
青色申告とは
所得税の申告は、納税者自身が1年間の所得金額と税額を計算し、申告・納税する「申告納税制度」に基づいて行われます。
農業を営んでいる方は、農作物の販売などによる収入から、農業経営に必要な経費を差し引いて農業所得を計算し、原則として確定申告を行います。
「青色申告」は、一定水準の記帳を行い、その記帳に基づいて正しく申告する方について、所得金額の計算などで有利な取扱いを受けることができる制度です。
青色申告を行うことができるのは、原則として、不動産所得、事業所得または山林所得のある方です。
農業所得は事業所得に該当しますので、農業を営む方も青色申告を利用することができます。
青色申告の主なメリット
青色申告には、白色申告にはないさまざまなメリットがあります。
主なものとして、次のような制度があります。
青色申告特別控除
一定の要件を満たすことで、所得金額から最高65万円の青色申告特別控除を受けることができます。
また、令和9年分(2027年分)からは、一定の要件を満たす場合、最高75万円の青色申告特別控除が新設されます。
青色事業専従者給与
一定の要件を満たす場合、青色申告者と生計を一にする配偶者や親族に支払う給与を、必要経費に算入することができます。
純損失の繰越し
事業所得などに赤字が生じた場合、一定の要件のもとで、その損失を翌年以後3年間にわたって繰り越すことができます。
純損失の繰戻し
前年も青色申告をしている場合など、一定の要件を満たすと、純損失を前年に繰り戻して、前年分の所得税の還付を受けることができる場合があります。
このほかにも、青色申告には一定の要件を満たすことで利用できる税制上の特典があります。
青色申告を始めるための手続
青色申告を行うためには、原則として、事前に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署へ提出する必要があります。
原則として、青色申告を行おうとする年の3月15日までが提出期限です。
その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合は、原則として、事業を開始した日から2か月以内が提出期限となります。
青色申告承認申請書は、税務署への持参・郵送のほか、e-Taxによって提出することもできます。
※ 既に青色申告をしている方が事業を引き継いだ場合など、状況によって提出期限が異なる場合があります。
帳簿・書類の保存
農業を営む方は、日々の取引を帳簿に記録するとともに、取引に伴って作成したり受け取ったりした請求書、領収書、納品書などの書類を保存する必要があります。
青色申告の場合、帳簿や書類は原則として7年間保存します。ただし、書類の種類によっては5年間でよいものもあります。
青色申告の場合
仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳などの帳簿は、原則として7年間保存します。
損益計算書、貸借対照表、棚卸表などの決算関係書類も、7年間保存します。
領収証、小切手控、預金通帳、借用証などの現金・預金取引等関係書類も、原則として7年間保存します。
一方、請求書、見積書、契約書、納品書、送り状などのその他の取引関係書類は、原則として5年間保存します。
白色申告の場合
白色申告の場合も、帳簿や書類の保存が必要です。
収入金額や必要経費を記載した法定帳簿は7年間、それ以外の任意帳簿や決算関係書類、請求書・納品書・領収書などの書類は、原則として5年間保存します。
※ 消費税の課税事業者の場合など、別の制度により7年間の保存が必要となる書類があります。
※ 電子取引で受け取った請求書、領収書、契約書などのデータについては、電子帳簿保存法に基づく保存が必要です。
青色申告特別控除
青色申告を行っている方は、一定の要件を満たすことで、所得金額から「青色申告特別控除」を差し引くことができます。
令和8年分(2026年分)までは、青色申告特別控除には10万円、55万円、65万円の区分があります。
65万円の青色申告特別控除
・65万円の控除を受けるためには、原則として次の要件を満たす必要があります。
・正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること
・その記帳に基づいて貸借対照表及び損益計算書を作成していること
・法定申告期限内に確定申告を行うこと
・e-Taxによる電子申告を行うこと、または優良な電子帳簿の保存を行うこと
優良な電子帳簿の保存によって65万円の控除を受ける場合は、仕訳帳及び総勘定元帳について、優良な電子帳簿の要件を満たして電子データによる備付け・保存を行い、所定の届出書を提出する必要があります。
なお、パソコンや農業簿記ソフトを使用して帳簿を作成しているだけでは、65万円の控除を受けられるわけではありません。
55万円の青色申告特別控除
正規の簿記の原則による記帳、貸借対照表及び損益計算書の作成、期限内申告などの要件を満たしている場合、55万円の青色申告特別控除を受けることができます。
10万円の青色申告特別控除
簡易な記帳による青色申告の場合は、一定の要件を満たすことで10万円の青色申告特別控除を受けることができます。
令和9年分(2027年分)から青色申告特別控除が変わります
令和9年分(2027年分)の所得税から、青色申告特別控除に「75万円」が新設されます。
これまでの青色申告特別控除の最高額は65万円でしたが、令和9年分からは、一定の要件を満たすことで最高75万円の控除を受けることができるようになります。
75万円の青色申告特別控除を受けるには
75万円の控除を受けるためには、まず、事業所得または不動産所得を生ずべき事業について、
・正規の簿記の原則に従って記帳すること
・貸借対照表及び損益計算書を作成すること
・法定申告期限までに確定申告書を提出すること
など、65万円控除の前提となる要件を満たす必要があります。
そのうえで、次のいずれかの要件を満たします。
① 優良な電子帳簿の保存
仕訳帳及び総勘定元帳について、訂正・削除・追加の履歴を確認できること、帳簿間の相互関連性が確保されていること、取引年月日・金額・相手方などによる検索ができることなど、一定の要件を満たした電子帳簿を保存します。
② デジタルシームレス保存
電子取引データについて、一定の要件を満たして保存するとともに、そのデータと電子帳簿との相互関連性を確保するなど、国税庁が定める要件を満たします。
そして、75万円の青色申告特別控除を受けるためには、e-Taxによる電子申告が必要です。
また、75万円の控除を受ける場合は、所定の届出書を提出する必要があります。
令和9年分からのポイント
令和9年分からは、青色申告特別控除について、電子申告や電子帳簿等の活用がこれまで以上に重要になります。
特に、「パソコンで帳簿を作成している」「農業簿記ソフトを使っている」というだけでは、75万円控除の要件を満たすことにはなりません。
使用するソフトが必要な機能に対応していることに加え、帳簿の作成・保存方法、電子取引データの保存方法、e-Taxによる申告など、それぞれの要件を満たす必要があります。
制度の詳細については、国税庁の最新の案内をご確認ください。
農業所得の計算
農業所得は、原則として、農業による総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。
農業の収入には、農作物の販売収入だけでなく、農産物の家事消費や事業消費、雑収入なども含まれます。
また、農業所得を正しく計算するためには、農作物の種類や収穫量、販売金額、必要経費などを適切に記録しておくことが大切です。
国税庁の農業所得者向け記帳案内では、農産物の収穫、販売、家事消費などについて、取引年月日、取引先、金額などを記帳することとされています。
農業の一般的な必要経費
農業所得を計算する際には、農業による収入を得るために直接必要となった費用を必要経費として計上します。
ただし、農業経営に必要な支出であることが基本であり、家事・生活上の支出は必要経費になりません。
また、農業と家庭の両方で使用している費用については、農業で使用した部分を合理的な基準によって区分して計上します。
農業で一般的に必要経費となるものには、次のようなものがあります。
雇人費
農業のために雇用した人に支払う賃金、給料など。
小作料・賃借料
農地の小作料・賃借料、農業用施設や農機具などの賃借料、農作業の委託料など。
減価償却費
農業用の建物、農機具、農業用車両、施設など、長期間使用する資産について、その取得価額を耐用年数に応じて費用として計上するもの。
種苗費
種もみ、種子、苗、種いもなどの購入費。
素畜費
子牛、子豚、ひななどの取得費や種付料など。
肥料費
肥料、土壌改良資材などの購入費。
飼料費
家畜・家きんなどの飼料の購入費。
農薬衛生費
農薬の購入費、共同防除費、家畜衛生に必要な費用など。
農具費
農具などの購入費。
なお、取得価額が一定額以上で長期間使用する資産については、農具費ではなく減価償却費として計上する場合があります。
修繕費
農業用建物、農機具、農業用車両、施設などの修理費。
動力光熱費
農業用に使用する電気、水道、ガス、灯油、ガソリンなどの費用。
作業用衣料費
農作業に使用する作業衣、長靴、地下たびなどの費用。
農業共済掛金
農作物、家畜、果樹などの農業共済に係る掛金。
荷造運賃手数料
農産物の出荷に必要な包装資材、運賃、販売手数料、出荷手数料など。
土地改良費
土地改良事業に係る費用や、農地の維持・改良に必要な費用など。
利子割引料
農業経営のために借り入れた資金の利子など。
租税公課
農業経営に使用する固定資産に係る固定資産税、自動車税、事業税など、必要経費となる税金や公課。
その他の経費
農業経営のために必要となった費用で、上記のいずれにも該当しないものは、内容に応じて「雑費」などとして計上します。
※ 必要経費となるかどうかは、支出の目的や使用状況によって異なります。
必要経費にならない主なもの
農業経営のための支出であっても、すべてが必要経費になるわけではありません。
次のようなものは、原則として必要経費にはなりません。
・所得税及び復興特別所得税
・住民税
・国民健康保険税
・国民年金の保険料
・国税の延滞税・加算税・過怠税
・地方税の延滞金・加算金
・罰金、科料、過料
・交通反則金
・家庭生活のための個人的な支出
ただし、国民年金保険料や生命保険料など、必要経費ではなく所得控除の対象となるものがありますので、支払った費用の区分には注意が必要です。
家事関連費について
農業用と家庭用の両方に使用する費用については、農業に使用した部分のみを必要経費として計上します。
例えば、農業用車両を私用にも使用している場合のガソリン代や、自宅で農業に使用する電気・水道などについては、農業で使用した割合を合理的な基準によって計算する必要があります。
農業用と家庭用の区分が難しい場合は、税務署や税理士等にご相談ください。
青色事業専従者給与
青色申告者が、生計を一にする配偶者や親族に農業の仕事をしてもらい、その給与を必要経費として計上する場合には、一定の要件があります。
「青色事業専従者給与に関する届出書」を、原則としてその年の3月15日までに税務署へ提出する必要があります。
その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合や、新たに専従者がいることとなった場合は、原則として、その日から2か月以内が提出期限となります。
専従者給与として認められるためには、届出書に記載した方法や金額の範囲内で給与を支給することなど、一定の要件を満たす必要があります。
赤字になった場合の取扱い
青色申告者の事業所得などに赤字が生じた場合、一定の要件を満たすことで、その純損失を翌年以後3年間にわたって繰り越すことができます。
また、前年も青色申告をしている場合など、一定の要件を満たすと、赤字を前年に繰り戻して、前年分の所得税の還付を受けることができる場合があります。
農業では、天候や病害虫、農産物価格などによって収入や経費が大きく変動することがありますので、こうした制度についても知っておくと安心です。
パソコン用農業簿記ソフト
パソコン用農業簿記ソフトは、伝票(日付・摘要・金額・相手勘定科目)を入力するだけで、元帳への転記から試算表・決算書の作成、青色申告に必要な帳簿の作成まで、効率的に行うことができます。
日々の取引を入力しておくことで、年間の収入や経費を把握しやすくなり、確定申告の準備だけでなく、農業経営の分析にも活用できます。
また、農業簿記ソフトを利用して作成・保存した仕訳帳や総勘定元帳が、電子帳簿保存法に定める「優良な電子帳簿」の要件を満たしている場合には、65万円の青色申告特別控除に必要な「優良な電子帳簿の保存」に該当します。
ただし、農業簿記ソフトを利用しているだけで65万円または75万円の青色申告特別控除を受けられるわけではありません。
ソフトの機能だけでなく、必要な帳簿を適切な方法で作成・保存していること、e-Taxによる申告など、それぞれの要件を満たす必要があります。
令和9年分から75万円の青色申告特別控除を目指す場合には、使用するソフトが「優良な電子帳簿」や「デジタルシームレス保存」に対応しているかについても、メーカー等に確認することをおすすめします。
農業簿記は経営改善にも役立ちます
農業簿記は、税金の計算や確定申告のためだけに行うものではありません。
日々の取引を記帳することで、
・どの作物の収益性が高いのか
・肥料や農薬などの資材費がどの程度かかっているのか
・農業機械や施設にどれだけ経費がかかっているのか
・売上に対して経費がどの程度かかっているのか
・前年と比べて経営状況がどう変化しているのか
などを把握することができます。
記帳した結果を経営分析に活用することで、経営規模や作付内容の見直し、コスト削減、労働時間の削減など、今後の農業経営を考えるための重要な資料となります。
複式農業簿記講習会
湖北地域農業センターでは、農業者の皆様を対象に、複式農業簿記に関する講習会を開催しています。
複式農業簿記の基本から、パソコンを使った農業簿記まで、農業者の皆様が実際の経営に活用できるよう、分かりやすく説明します。
特にパソコン簿記では、日々の取引入力から試算表・決算書の作成まで、実際に農業簿記ソフト(体験版)を使用しながら学んでいただきます。
農業簿記を身につけ、確定申告だけでなく、これからの農業経営に役立ててみませんか。
講習会の開催については、当地域農業センターのホームページやLINE公式アカウント等(認定農業者には個別発送)でお知らせします。
農業簿記ソフトについて
湖北地域農業センターのパソコン複式農業簿記初心者講習会では、JA全中(全国農業協同組合中央会)が推奨する農業簿記ソフト(ソリマチ株式会社)体験版を使用して、実際の取引入力や帳簿作成を学んでいただきます。
農業簿記ソフトには、農業経営に必要な勘定科目や農業特有の処理に対応した製品があります。
ソフトの導入を検討される場合は、現在使用しているパソコンの環境や、必要な機能、電子帳簿保存への対応状況などを確認したうえで選択することをおすすめします。
※下記より、各種農業ソフト(ソリマチ株式会社)のパンフレットがダウンロードできます。
電子取引データの保存について
請求書、領収書、契約書、見積書などについて、メールやWebサイトなどを通じて電子データで受け取ったり、電子データで交付したりした場合には、電子帳簿保存法に基づき、その電子取引データを一定の要件を満たして保存する必要があります。
例えば、メールで受け取ったPDF形式の請求書などを、紙に印刷して保存するだけではなく、原則として電子データのまま保存する必要があります。
電子取引データの保存には、改ざん防止や検索機能など一定の要件があります。
電子取引を行っている農業者の方は、電子帳簿保存法の最新の内容を確認しておきましょう。
国税庁からのお知らせ
青色申告、農業所得の記帳、帳簿・書類の保存、電子帳簿保存法などについては、国税庁から最新の資料が公開されています。
特に、令和9年分から青色申告特別控除の制度が改正されるため、今後、確定申告を行う際には最新の情報をご確認ください。
👉 国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」
👉 国税庁「青色申告制度」
👉 国税庁「農業所得者用 帳簿の記帳のしかた」
国税庁では、農業所得者向けの帳簿の記帳方法や様式例も公開しています。
これからの地域農業を担っていく担い手が、今後においても安定的かつ効率的な経営を行っていくためには、自らが農業簿記の記帳に基づいて経営の状態を分析・診断し、その結果を踏まえて、経営改善のための適切な判断や具体的な対策を講じることが重要です。
農業簿記は、確定申告のためだけのものではなく、「自分の農業経営を数字で知るための道具」でもあります。
湖北地域農業センターでは、今後も農業簿記に関する講習会を計画してまいります。
農業経営の状況を把握し、経営改善に役立てるためにも、ぜひご参加ください。
ご注意
このページは、農業者の皆様に青色申告制度や農業簿記の概要を知っていただくための情報を掲載しています。
税制や申告手続、控除の適用要件等は改正される場合があります。また、個々の所得状況や経営内容によって取扱いが異なる場合があります。
実際の申告にあたっては、最新の国税庁の情報をご確認いただくか、税務署・税理士等にご相談ください。
特に、令和9年分(2027年分)からは青色申告特別控除の制度が改正されますので、e-Tax、優良な電子帳簿、デジタルシームレス保存等の要件について、最新情報をご確認ください。
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新しく農業をはじめる新規就農者様を応援する取り組みとして、農業経営者様向けソフト「農業簿記」を特別価格で提供するキャンペーンを2018年より実施されています。応援特別価格のご案内:https://sorimachi.co.jp/lp-newfarmer/
※ 製品名、価格、キャンペーン等については変更される場合がありますので、最新のメーカー情報をご確認ください。
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