農業者の確定申告に向けた準備と注意
白色申告・青色申告に関わらず、農業者が毎年必ず行っておきたい「年末から確定申告前までの基本的な準備」です。
日々の出荷記録や経費の整理、棚卸、農機具の購入状況、補助金の整理など、農業経営では確認すべき項目が多くあります。これらを早めに整えておくことで、申告作業が円滑になるだけでなく、経営状況の把握や来年度の計画づくりにも役立ちます。
1.共通して必要な準備
【記帳・帳簿整理】
📑 1年間の売上(出荷伝票・市場計算書・直売分)を整理する
🧾 経費の領収書(肥料・農薬・資材・燃料など)を日付順・科目別にまとめる
🏠 家庭と共用のもの(軽トラ・携帯・光熱費)は事業使用割合をメモしておく
🧮 現金出納帳・預金出納帳と実際残高を突き合わせしておく
【棚卸(12月31日時点)】
🌱 未使用の「肥料」「農薬」「種子」「苗」「飼料」
🥬 販売前の収穫物(米・野菜・果樹など)
🍓 貯蔵中の農産物加工品
⚠️ 数量と金額(仕入価格・製造原価)を記録しておく
【固定資産の確認】
🚜 農機具(トラクター・コンバイン・ハウス設備など)の取得年度・金額を整理
🧾 新しく購入した機械(農機具など)は、領収書・見積書を準備
🗂️ 償却資産申告(1/31締切)も必要なため、早めに確認
【農業者特有の確認事項】
📄 農業共済掛金(NOSAI)の証明書
🛡️ 収入保険の保険料
🧾 源泉徴収票(作業委託・アルバイト収入がある場合)
⚠️ 補助金の用途・経費算入の可否に注意
※ 補助金は種類により課税・非課税、経費算入の可否が異なるため注意
2.白色申告
特 徴
🟧 簡易帳簿(現金出納帳・収入帳・経費帳など)で記帳できる
🟧 形式は緩いが、白色申告でも記帳義務と帳簿保存義務がある
🟧 控除や特典が少なく、節税効果は小さい
🟧 所得が同じでも青色申告より税額が高くなりやすい
🟧 家族給与は「専従者控除」の範囲内までしか認められない
🟧 将来的に規模拡大するなら、青色申告への変更が望ましい
必要書類
🔶 収支内訳書(農業用)
注意点
🟠 領収書や帳簿が不十分だと、後日税務署からの確認が入る可能性がある
🟠 帳簿の記録・保存が必要(義務あり)
3.青色申告(10万円控除・65万円控除)
【共通メリット】
🎁 青色申告特別控除(10万・55万・65万)
👨🌾 家族給与を「青色事業専従者給与」として全額必要経費にできる(事前届出が必要)
🔄 赤字(純損失)を3年間繰り越して相殺できる
【青色申告(10万円控除)】
特 徴
🟦 簡易簿記(複式でなくても可)で申告できる
🟦 白色申告より記帳内容が明確になり、最低限の青色特典を受けられる
必要書類
🔷
青色申告決算書(農業所得用・簡易)
🔷 損益計算書
🔷 確定申告書(B様式)
注意点
🔵
控除額が小さく、節税効果は限定的
🔵 帳簿の正確な記帳と保存が必要
🔵 複式簿記ではないため、65万円控除に比べると提出書類の種類が少ない
🔵 将来的に65万円控除へ移行する予定がある場合は、早期に複式簿記へ慣れておくとスムーズ
【青色申告(65万円控除:e-Taxが前提)】
特 徴
🟦
農業者が最もメリットを得られる青色申告形式
🟦 複式簿記による帳簿付けが必要
🟦 電子帳簿保存、または e-Tax での申告が必須
🟦 複式簿記により収支の透明性が高まり、経営改善にも役立つ
必要書類
🔷 青色申告決算書(農業所得用)
🔷 損益計算書
🔷 貸借対照表(必須)
🔷
確定申告書(B様式)
注意点
🔵
帳簿の正確性が求められ、不備があると65万円控除は受けられない
🔵
記帳が遅れると修正に時間がかかり、申告期限に影響する
🔵 会計ソフト(農業簿記、弥生など)の利用が推奨される
🔵 e-Tax 利用開始手続き(ID・パスワード、マイナンバーカード)が必要
※ 65万円控除は、電子申告(e-Tax)または電子帳簿保存が前提条件です。
4.申告前チェックリスト
✅ 棚卸(12/31時点)は済んでいるか
✅ 補助金・共済掛金・収入保険などの証明書を揃えたか
✅ 家族従事者給与の扱いは正しいか
✅ 農機具の購入、下取り金額の整理はできているか
✅ 帳簿と通帳残高は一致しているか
✅ 青色65万円控除の条件(複式簿記・e-Tax)は満たしているか
早めの準備で、安心して確定申告を迎えましょう。

