令和6年度病害虫発生予察特殊報第2号
令和6年9月30日 滋賀県病害虫防除所は、病害虫発生予察情報(特殊報第2号)を発表しました。
病原ウイルス Cucurbit aphid-borne yellows virus:CABYV
対 象 作 物 メロン、キュウリ
発 生 地 域 滋賀県南部
1.発生経過
(1)令和6年6月、滋賀県南部の施設メロンほ場において、葉の葉脈間の黄化や白化症状を示す株が
認められた(写真1~4)。
(2)滋賀県病害虫防除所および神戸植物防疫所において、RT-PCR法による検定およびその増幅産物の塩基配列の系統解析を行ったところ、CABYVの感染を確認した。
(3)発生ほ場から採取したワタアブラムシ(写真5)を健全なメロンに放飼し、ウイルスを接種した結果、メロン葉の黄化が認められ、CABYVが再検出された(写真6)。
(4)CABYV発生ほ場の周辺調査の結果、近隣の施設キュウリほ場においてもCABYVが検出された。
(5)本ウイルスは、1988年にフランスにおいて、メロンやキュウリ等で初めて発生が確認され、それ以降、海外40か国以上で主にウリ科野菜に被害を及ぼしている。国内では、令和6年に京都府のキュウリにおける国内初の特殊報が発表されているが、メロンにおける発生報告はない。
2.本病の特徴
(1)病徴葉全体もしくは一部に葉脈間の黄化や白化症状を示す(写真1、3、4)。症状が進むと、株全体の葉が黄化するが、新葉や脇芽等の若い葉には症状が見られないか、時間が経ってから黄化する(写真2)。
(2)伝染経路
①本ウイルスは、海外ではワタアブラムシやモモアカアブラムシ等のアブラムシ類により媒介されると報告されている。なお、汁液伝染、種子伝染および土壌伝染は確認されていない。再現試験の結果から、国内においてもアブラムシ類により媒介されると考えられる。
➁媒介虫は、罹病植物を吸汁することで本ウイルスを保毒し、一度ウイルスを獲得すると永続伝搬
(長期間あるいは生きている限り媒介できる)するが、経卵伝染はしない。
③感染すると落花が多くなり、1株当たりの果実数が減少することで、メロンでは40%、キュウリ
では51%減収した事例が海外で報告されている(Lecoq et al., 1992)。
3.防除対策
(1)ウイルスを媒介するアブラムシ類の防除を徹底する。
①苗からアブラムシ類を持ち込まないよう注意する。
②施設開口部に目合い0.8mm以下の防虫ネットを張り、施設内へのアブラムシ類の侵入を防ぐ。
③施設内およびほ場周辺の雑草はアブラムシ類の発生源となるので、除草を徹底する。
④アブラムシ類の発生が確認された場合は薬剤防除を実施する。
⑤アブラムシ類の薬剤感受性の低下を防ぐため、同一グループの薬剤の連用を避ける。
⑥施設栽培では、アブラムシ類を周辺に分散させないため、栽培終了後にすべての株を地際から切断または抜根し、施設を密閉して死滅させる。
(2)発病株は直ちに抜き取り、ポリ袋等に密閉してほ場外に持ち出して処分するか、土中深くに埋め込む等適切に処分する。
4.引用文献
Lecoq et al. (1992), A new yellowing disease of cucurbits caused by a luteovirus,
cucurbit aphid-borne yellows virus. Plant Pathology, 41: 749-761.
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