令和6年度病害虫発生予察特殊報第3号
令和6年11月14日 滋賀県病害虫防除所は、病害虫発生予察情報(特殊報第3号)を発表しました。
病害虫名 オリーブ立枯病
病原体名 Ralstonia solanacearum
対象作物 オリーブ
発生地域 滋賀県北部
1.発生経過
(1)令和6年8月、滋賀県北部のオリーブほ場において、葉が褐変し、萎凋・枯死する株が認められ
た(写真1)。症状の見られた樹では幹の内部が変色しており(写真2)、変色部からは菌泥(細菌の集合体が粘液状になったもの)の漏出が認められた(写真3)。
(2)滋賀県病害虫防除所において、マルチプレックスPCR法による検定を実施したところ、Ralstonia
solanacearum(phylotypeⅠ)と同定されたため、本病はオリーブ立枯病であることが判明した。
(3)国内での本病の発生は、平成30年に香川県で初めて確認され、その後、鹿児島県、宮崎県、広島県、静岡県、三重県で報告されている。
2.本病の特徴
(1)病徴葉枯れや落葉、果実の萎凋(写真1)を生じ、その後、樹全体が枯死する。症状の出ている幹の断面はにじむように褐変している(写真2)。
(2)病原菌の特性Ralstonia solanacearumは、トマトやナスなどのナス科植物やイチゴ、ダイコン、ショウガなど多数の植物に青枯病を引き起こす土壌伝染性細菌である。
(3)伝染経路オリーブにおける感染経路は明らかにされてないが、一般的に青枯病菌は土壌中に生息し、植物の根の傷口から侵入する。その後、維管束部で増殖し、地上部を萎凋させる。また、収穫や剪定などの管理作業でも発病株から健全株へ伝染する。
3.防除対策
(1)オリーブ立枯病に対する登録農薬はなく、汚染された土壌から本病原菌を完全に除去することは困難であるため、耕種的防除が基本となる。
(2)管理作業による伝染を防止するため、剪定バサミやノコギリなどの用具の消毒(70%エタノールや200ppm(0.02%)以上の次亜塩素酸ナトリウム水溶液の噴霧)を行う。
(3)発病や感染が疑われる樹の剪定作業などは最後に行う。
(4)ほ場へ出入りする際は、衣服や帽子、手袋から土を払い落とし、靴や手袋の消毒を行う。
(5)ナス科作物の青枯病など、本菌を原因とする病気の発生が過去にあったほ場の利用を避ける。
(6)発病樹は伝染源となることから、速やかに抜根・除去し、残渣をほ場外に持ち出して焼却するなどして適切に処分する。
4.参考文献
伊達 寛敬(2003)、青枯病菌による病害、植物防疫、57: 380-383.
堀田 光生・土屋 健一(2012)、青枯病菌 Ralstonia solanacearum. 微生物遺伝資源利用マニュアル(12)
改訂第2版
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