令和8年産 近江米生産基本方針
近江米振興協会
1 令和7年産米の作柄・品質と情勢
【本県産米の作柄と品質の概況】
・梅雨明けが6月27日頃と平年より22日早く、6月中旬から気温が平年より高く推移したことから、高温の影響によって稲体の窒素代謝が増加し、登熟後期の栄養凋落による登熟不良となり、白未熟粒が多く発生し玄米品質が低下した。
・穂いもち病の発生は平年より少なかったものの、斑点米カメムシ類の発生が多く、令和7年7月17日には注意報が発表され、適期防除が呼びかけられた。
・農林水産省が公表した作況単収指数(10月25日現在)は、全国が「102」に対し、本県では「105」の「やや良」となったが、水稲うるち玄米の1等米比率(10月31日現在)は、本県平均は36.1%と全国平均76.8%を大きく下回っている。
・水稲出穂後20日間の日平均気温が27℃を超えると白未熟粒が増加するが、令和7年産においては、いずれの品種も出穂後20日間の日平均気温が29℃を超える高温に遭遇し、品質が低下したと考えられる。
【需給および価格の動向】
・全国の主食用米の作付面積は、前年産(125.9万ha)から108,000ha増の136.7万ha、生産量は前年産(679.2万トン)から67.6万トン増の746.8万トンとなった。
・本県での主食用米の生産量は、飼料用米等から転換が進んだことにより、昨年11月の滋賀県農業再生協議会臨時総会において設定された生産目標(生産の目安)148,000トンより9,000トン多い157,000トンとなり(面積では29,300ha)、生産数量は生産の目安より6%増産となった。
・米の需要拡大や流通の多様化等を背景に令和6年夏頃から米の品薄状況となり、全国的に米の集荷競争が激化したことにより、令和7年産米の概算金について、玄米60kgあたり26,000~30,000円程度と前年比6~8割高となり、県内JAにおいても、同様に前年比6割高となった。
・また、令和7年産米の相対取引価格は、令和7年10月時点で全銘柄平均価格は前年産+12,109円(36,965円/60kg)となっており、同様に本県産米でも、コシヒカリで前年比+148%の34,952円、みずかがみで+151%の35,293円となっている。
・こうした中、京阪神の卸等は、より近郊の産地の主食用米を集荷したい意向があり、近江米の引き合いは強いが、米価の上昇や流通が多様化し、集荷業者等に米が集まりづらく、卸等が求める近江米の数量を供給できていない状況となっている。
【主食用米の安定生産】
・主食用米の需給動向の変化も踏まえつつ、水田農業を基幹とする本県農業の持続的な発展に向け、関係機関・団体が事前契約(播種前契約、複数年契約等)とその履行を着実に進め、実需者等が求める主食用米の数量をしっかりと生産、供給することにより、産地として信頼される需給関係の構築が重要となる。
【需要に応じた麦・大豆等の生産】
・麦・大豆は、本県水田農業の基幹作物であり、実需者との信頼関係を築きながら作付拡大を進め、面積は麦で全国6位、大豆で全国5位の主産地となっている状況にあり、米の状況に応じて極端に面積を変動するようなことはせず、今後とも実需者から信頼される産地として、需要に応じた生産を継続していくことが重要となっている。
2 令和8年産米の生産に向けた基本的な考え方
・10月末に公表された国の「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」(以下「基本指針」という。)では、令和8/9年の主食用米等需要量の見通しを踏まえ、令和8年産米における主食用米等生産量の目安は711万トンと示された。これにより令和9年6月末在庫数量は、215~245万トンと見込まれている。
・国からは需要に応じた生産が示される中、本県では、京阪神の卸等に必要な近江米の数量を供給できていない状況にある一方で、主食用米以外の作物の需要に基づく継続した生産も必要なことから、滋賀県農業再生協議会では、令和8年産米の県全体の作付面積を令和7年産実績とほぼ同等の29,497haとし、生産の目安は153,000トンと設定されたところ。
・この数値を目安とし、事前契約(播種前契約、複数年契約等)に基づく需要に応じた米づくりなど産地の戦略的な取組を着実に進めることで、全国に占める近江米の需要量シェアの維持・向上を図る。
<具体的な取組>
☞集荷業者は卸売業者等が求める品種や用途等の情報を把握するとともに、生産者に対する情報提供や作付提案を行い、事前契約による実需者との結び付きを強化する。
☞生産者は、求められる米をしっかりと生産し供給するなど、契約に基づいた生産を基本とし、契約があるものを確実に出荷することで経営の安定化を図る。
☞関係機関・団体は、播種前契約に基づき既に播種されている麦や、市町農業再生協議会から示される生産目標との整合を図りながら、「求められている米」の作付けを「誰に」「どのように」推進するかを検討する。
・栽培においては、恒常化している気候変動、特に夏期の異常高温に適応するため、土づくりをはじめ基本的な技術対策を徹底するとともに、生育状況に応じた施肥や水管理、温暖化に伴い増加する病害虫防除などの迅速な情報提供により対策技術の実践を促し、収量向上と外観品質の安定を図る。
・農地の集積・集約化や農業機械の効率利用、土壌診断等に基づく適正施肥等により生産コストの低減を推進する。
・これらの対策を総合的に実施することにより、実需者から求められる「環境にやさしく」、「高品質」で、「安全・安心」、「おいしい」近江米の生産を推進するものとする。
3 主要品種の作付方向
・令和7年度末に策定を予定している「近江米生産・流通ビジョン」(第3期)との整合性を図りつつ、契約に基づく生産と安定供給を推進する。
・具体的な推進にあたっては、家庭用、業務用等の用途別需要情報を関係機関が収集・共有するとともに、生産者にその情報を確実に伝達したうえで作付提案を行い、集荷業者と生産者の間の播種前契約を中心とした事前契約を積極的に進めるなど、需要に応じた生産を行った上で、必要数量が集荷できるよう全ての関係者が連携して取り組む。
・「みずかがみ」や「コシヒカリ」等の良食味品種については食味の高位安定化を進め、食味ランキング(日本穀物検定協会)での「特A」取得をはじめ、「環境こだわり米」の比率を高めるとともに、その象徴となる「オーガニック米」等の特色ある米づくりやGAP等の取組による安全・安心な米づくりを進め需要の拡大を図る。
・令和6年産に本格デビューした「きらみずき」について、琵琶湖の保全に留まらず、温暖化防止や生物多様性の保全など、持続可能な農業のシンボルとして位置付ける。そのため、「オーガニック栽培」および「化学肥料(窒素成分)や殺虫・殺菌剤(化学合成農薬)を使用しない栽培」に限定し、「おいしさ」とともにこうした環境保全に対する一歩進んだ取組の価値を消費者が共感し支持・購入いただけるよう関係者等と共に推進を図る。
・近年、記録的な猛暑等の影響により主に業務用として流通する「キヌヒカリ」等では白未熟粒が発生するなど品質の低下が生じており、近江米の安定生産・品質向上に向け、気候変動下でも安定した栽培が可能となる高温耐性品種への早期の転換を推進する。
4 技術対策
(1)収量の安定化と品質の向上(全品種共通)
・近年は、気候変動の影響により、平年に比べて「気温」、「日照時間」および「降水量」の乱高下が認められ、また、大型台風等の気象災害が頻発するなど、近江米の収量と品質が不安定となっている。
・こうした気候変動に適応し、良質な近江米を生産するために、「猛暑に打ち克つイネづくり」(令和7年1月)等に基づき、高温対策を実践する。特に、緊急的に対応が必要な技術については栽培期間中でも臨機応変に対応できるよう促す。取組が不十分な技術については、生産者が着実に実践するよう関係者が誘導を図り、安定した収量の確保と1等米比率80%以上を目指す。
<必須基本技術>
☞土壌診断結果に基づき有機物や土づくり肥料を施用するとともに、深耕等により根張りを促進するなど、土づくりを実践し栄養凋落を防止する。
☞前作の稲わらは優良な有機物であるため秋期(年内)にすき込み、腐熟を促進させる。
☞産地や品種、目指す米づくりに応じた収量目標を設定し、過度の窒素施肥や有機物施用を控える。
☞健苗育成に努める。
☞3~4本/株の細植を基本とし、350~400本/㎡の穂数が確保できるよう、品種特性や土壌条件等に合った適切な栽植密度を選択する。
☞施肥田植機では肥料の種類ごとに目盛りを調整し、規定量を確実に施肥する。
☞活着後は浅水管理に努め、分げつを促進させる。
☞還元障害は、前年の作物残さや雑草の腐熟が進んでいない状態で入水・代かきを行うと発生しやすくなるので、作物残さのすき込みは前作収穫後、早めに行い腐熟を促進させる。例年、冬雑草の多いほ場では早春の砕土による除草や入水・代かきまでの期間を十分あけて砕士・すき込みを行い、分解を促すとともに、移植後は分げつ期の水管理に注意する。
☞適期・適切に中干しを行う。
☞出穂前後3週間の常時湛水(水深3~5㎝に管理)を行い、品質低下の防止と収量向上を図る。なお、深水とならないように注意すること。
☞全量基肥(一発肥料)栽培においても幼穂形成期以降の葉色が淡いほ場では、葉色を維持するため穂肥を施用する。
☞斑点米カメムシによる被害を防ぐために、出穂3週間前と出穂期の2回、畦畔の草刈りを行い、併せて適期に適切に薬剤防除を行う。
☞収量や品質に大きく影響する登熟期の水管理については、収穫作業に支障がない程度に落水を遅らせ、間断かんがいによる水分供給を徹底する。
<臨機応変な対応>
☞病害虫防除所から発表される発生予察情報に基づき、適期適切な病害虫防除を実践する。特に、「いもち病」、「斑点米カメムシ類」および「トビイロウンカ」は収量および品質に大きな影響を及ぼすため、情報には注意する。
☞農業技術振興センターから発信される「水稲生育診断情報」、気象災害等の発生が予想される場合に発信される「技術情報」等に基づき、臨機応変に対策を実践する。特に、「きめ細やかな水管理」と全量基肥栽培における「追肥の必要性」にも注意する。
(2)「みずかがみ」の収量・食味の高位安定化
・「特A」産地に相応しい良食味米生産に努め、消費者等の期待に応えることが重要である。
・このため、令和5年2月に近江米振興協会が発行した「みずかがみ栽培マニュアル」に基づく技術対策を徹底する。
(3)新品種「きらみずき」の生産安定
・生産(農業者)から販売(消費者)までの繋がりを強く意識し、コンセプトである“こだわる人が選ぶ「おいしさ」と「やさしさ」”による好循環が生まれるよう、生産・流通・販売の各段階が連携して一体的に取り組む。
・令和5年産から令和7年産の収量の状況を見ると、収量が確保できなかった原因として穂肥など基準量に満たないほ場が多く、生育後半まで栄養状態を維持できなかったことや、ごま葉枯病や縞葉枯病など病害虫が多発し、収量低下を助長したと考えられる。
・そのため、地力の高いほ場を選定することや、単収が確保できているほ場では牛ふん堆肥を運用し、土づくりを実践されている事例が多いことから、堆肥施用や深耕等の土づくりを継続して進めることが重要となる。
・斑点米カメムシ類についてはイネの出穂3週間前と出穂期の2回の草刈りを徹底し、縞葉枯病については、刈り株再生芽(ひこばえ)やイネ科雑草が病原ウイルスを保護したヒメトビウンカの越冬場所になり、次作の病原ウイルスの伝染源になるため、前作の水稲収穫後に早期に耕うんし、畦畔等ほ場周辺の雑草を刈り取る。また、ごま葉枯病については、生育後期に栄養凋落が起こると発生が助長されることから、イネの初期生育が旺盛になりすぎず、登熟後期まで肥料が不足しないよう栽培管理や施肥管理を改善するとともに、堆肥や土づくり肥料の施用、深耕等の上づくりを実践する。
5 「安全・安心」な滋賀の特色ある米づくり
・「環境こだわり米」の生産拡大を図ることとし、区分荷受け・区分管理により、「環境こだわり米」としてのロットを確保するなど、安定した流通に取り組む。
・「みずかがみ」については、全て「環境こだわり栽培」であることから、「みずかがみ」と作付面積の多い「環境こだわり米こしひかり」について専用パッケージを用いて販売するなど、安全・安心な近江米の代表的取組として継続する。
・さらに、水稲では環境保全型農業直接支払交付金の取組面積が全国一であること、生産者が国民的資産である琵琶湖の環境保全のために努力していることを「おいしさ」とともに県内外に発信するとともに、環境こだわり農業の象徴的な取組として「オーガニック近江米」や「きらみずき」を推進する。
・食品としての安全性の確保に加え、環境保全、労働安全等を目的としたGAPの取組とその高度化に向けての実践を推進する。
・カドミウムの吸収を抑制するため、土づくり肥料の施用および出穂前後各3週間の常時湛水を徹底する。
6 コスト低減を図るための技術対策等
・集落営農による水稲経営の一元化、担い手への農地の集積・集約化、作期分散に配慮した品種の作付けを進め、施設・機械の効率利用を図り、コスト低減を推進する。
・近年、省力化やコスト削減につながるとして期待の大きい、水田の水管理遠隔操作技術、自動操舵機能付きトラクタ・田植機およびドローンを用いたリモートセンシング等のICT等の先端技術を活用したスマート農業を推進する。
・直播栽培など低コスト・省力技術の普及拡大を図る。
・土壌診断や生育診断等に基づく土づくりや効率的な施肥を進め、資材コストの低減を推進する。
7 環境保全対策の推進
・琵琶湖および周辺環境への負荷を軽減して農業の持続的発展を進めていくために、地力増進作物の作付けや自動操舵機能付き田植機の活用、農業濁水の流出防止、農業系廃プラスチックの排出抑制に取り組む。
・特に緩効性肥料の被膜殻が意図しない形で河川等へ流出することを防ぐため、水管理は適正に行う。
8 普及推進体制
・これらの対策等の着実な実践を図るため、次の取組により、関係者の情報共有、農業者への周知を図る。
☞需要に応じた米づくりを進めるため、品種別、用途別の生産状況や流通・販売動向について、あらゆる機会を通して生産者に対し確実に伝達する。
☞安定した作柄や品質の高位安定化を図るため、生育情報の発信、啓発資材の配布、農談会の開催等を通してタイムリーな情報伝達を徹底する他、現地研修会の開催や部会組織等での研鑽活動を通して技術の実践に結び付ける。

「湖北はひとつ」を合言葉に!
ホーム ご来館の皆さまへ 研修会・講習会ブログ 注意喚起ブログ イベント等ブログ 組織代表者変更届 ご意見・お問い合わせ
